新車試乗レポート
更新日:2019.05.22 / 掲載日:2018.04.12

【試乗レポート】強そうに見えて癒し系!? バカンスの国からやってきたSUVルノー カジャー

文と写真●ユニット・コンパス

 太陽の下で見るルノー カジャーは、写真よりも筋肉質で、堂々としたスタイルの持ち主だった。
 市場の人気に後押しされる形で、各メーカーから続々、まさに雨後の筍がごとき勢いで登場しているSUV。ルノーから登場したカジャーは、そのなかでもコンパクトSUVに分類されるモデルなのだが、実際に対面してみると、コンパクトという言葉がちょっと似つかわしくないような迫力がある。

ルノーのデザイン言語をSUVに当てはめた肉感的なスタイリング

 ルノーのSUVといえば、キャプチャーがすでに導入されているが、キャプチャーの全長・全幅・全高が4135×1780×1585mmなのに対して、カジャーのそれは4455×1835×1610mmとひとまわり以上も大きい。
 ルノーはデザインにおいて、ブランドらしさを個別のクルマに落とし込むという「サイクル・オブ・ライフ」コンセプトを掲げている。具体的には、ブランドシンボルを包み込むようなグリルと、そこから「Cシェイプ」LEDを採用したヘッドライトを繋いだワイドさを強調する顔つきが、ルノー車としてのデザインアイコンで、生物のようななめらかな曲面でボディパネルは構成される。
 カジャーも、そのコンセプトを受け継ぎつつ、SUVに求められる骨太で、タフなシルエットとなっている。ボディ下部とフェンダー部をおおう樹脂パーツもSUV的なディテールで力強い。キャプチャーがSUVといいながら、ハッチバックとのクロスオーバー的ニュアンスを漂わせるのに対して、カジャーはまさに正統派SUVデザインと言えるだろう。
 足元を飾る19インチホイールも迫力がある。これは、日本導入に際してルノージャポンがこだわったところだそうで、確かに全体の雰囲気を高めるのにひと役買っている。
 なお、今回試乗したのはグリ チタニアムメタリックと呼ばれる濃紺色だったが、ほかにも赤(ルージュ フラムメタリック)や青(ブルー コスモスメタリック)、白(ブラン ナクレメタリック)といったボディカラーが用意されている。色によっても大きく印象が異なるため、ぜひディーラーで実車を確認してもらいたい。

シンプルで上質感のあるインテリア。荷室は使い勝手もいい

 インテリアも、シンプルかつ機能的で、ダッシュボードの張り出しを最小限に抑えるというルノーらしさをベースに、センターコンソールの脇にアシストグリップを配置するなどしてSUVらしさを漂わせている。
 かつてフランス車が苦手としていたインフォテイメント系も頑張っている。センターコンソールの7インチマルチファンクションタッチスクリーンは、スマートフォンとも連携し、ナビアプリのミラーリングにも対応。自動でステアリング操作を行い、駐車をサポートするイージーパーキングアシストも用意される。

 シート表皮はレザー。上質さの演出にもひと役買っているし、汚れをサッと拭き取れるという実用上の面でも嬉しい。運転席は電動調整式だ。そんなシートは、SUVらしくアレンジメントも考慮されている。後席背面はラゲッジ側に用意されたハンドルを引くことで、リヤドアを開けることなく、折りたためるのだ。
 こうすることで、標準状態で527Lのラゲッジルームはフラットになり、最大で1478Lまで拡大可能。さらに、ラゲッジフロアの床板は2分割タイプとなっており、床板をパーテーションとして活用できるよう溝が用意されている。ちょっとした工夫ではあるが、実際にクルマを使っていると、こうしたパーテーションが最初から用意されているのはありがたいもの。さすがバカンスの国から来たクルマである。

素敵な休日を過ごすのにぴったりな癒し系の走り

 試乗が行われたのは山梨県山中湖。人気の観光スポットであり、カジャーにもよく似合うシチュエーションだ。
 走り出しは、少々頼りない。立派なボディに対して、ターボ付きとはいえ排気量わずか1.2Lのエンジンだから仕方がないが、停止状態からの発進ではアクセルを強めに踏む必要がある。
 しかし、一度走り始めてしまえば小排気量であることはだんだんと気にならなくなってくる。トランスミッションとのマッチングもよく、スルスルと車速が伸び、巡行スピードとなった頃には、いい意味でエンジンの存在感の希薄さが車内の心地よさにひと役買っていることに気がついた。

 周囲のクルマと同じようなペースで湖畔の周辺を走らせる。ボディの姿勢制御がいいため走らせやすく、乗り心地がいい。ふわふわとした乗り心地のよさではないが、目線や身体がゆすられにくく、路面からのショックも上手にいなすタイプの快適さだ。
 ルックスに貢献する19インチホイールは、乗り心地に不利なはずではあるが、組み合わせているタイヤがいい。コンチネンタルのコンチ・スポーツ・コンタクト5は、高性能車両やラグジュアリーカーにも使われる高性能タイヤで、カジャーの価格帯を考えるとなかなか採用しにくいはず。あとでルノージャポンに確認したところ、ルックスと乗り心地を両立させるために、タイヤにはコストをかけたと教えてくれた。

  フットワークのよさに気分をよくして、カジャーをワインディングに連れ出してみる。高低差とコーナー曲率のバリエーションが豊富で、本来ならメガーヌやルーテシアで訪れたいようなルートだ。
 ここでカジャーは見事な走りを披露した。といっても、パワーとグリップでねじ伏せるような走りではなく、重量級ボディをスムーズにコントロールしながら、巧みなパワーデリバリーで、しなやかにワインディングの登り下りをクリアしてみせたのだ。
 この日はテストすることが叶わなかったが、これなら高速道路を含めた長距離を一気に移動するような使い方も問題ないだろう。疲れにくく、扱いやすいいいクルマだ。

 いまや国産、輸入車問わず、魅力的なクルマがひしめくコンパクトSUVというジャンルにおいて、カジャーはトップセールスを競う存在ではないかもしれない。
 だが、レジャーの道具として必要十分な機能性とルノーらしいスタイリング、そして懐深い癒し系の走りは、ライバルにはない独自のキャラクターだと言えるだろう。いろいろなコンパクトSUVと乗り比べて、「カジャーがいい」というユーザーはきっといるはず。そして、ほかのルノー車と同様に、長く愛用されるに違いない。


ルノー カジャー インテンス(7速AT・7EDC)
全長×全幅×全高 4455×1835×1610mm
ホイールベース 2645mm
トレッド前/後 1560/1560mm
車両重量 1420kg
エンジン 直列4気筒DOHCターボ
総排気量 1197cc
最高出力 131ps/5500rpm
最大トルク 20.9kgm/2000rpm
サスペンション前/後 ストラット/トーションビーム
ブレーキ前/後 Vディスク/ディスク
タイヤ前後 225/45R19

販売価格 347万円(インテンスのみ)

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グーネットマガジン編集部

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